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2011-03

人前で話すことへの恐れを解決する5つの方法

この記事の所要時間: 657

人前で話すことに抵抗がある人にオススメな本があったのでご紹介。

パブリックスピーカーの告白 —効果的な講演、プレゼンテーション、講義への心構えと話し方

著者のスコット・バークンは、マイクロソフトで1994年から2003年にかけて働き、主にIE1.0から5.0のプログラム・マネジメントを担当していたという経歴の持ち主です。プログラマとしてはなんとなく親近感が湧きますね。

この本では現在講演家として活動している著者のノウハウが記されているのですが、著名な講演家の高度なテクニックというよりは、率直に一人の人間として講演、発表に向かう姿勢が書かれています。これまで数多くの発表をこなしている著者でも発表前には恐怖を抱き、それに対処するために様々な努力を重ねている点についてはとても参考になります。

この本を読んで感じた人前で話すことへの対応方法を5つにまとめてみました。

1. ささいな失敗は起こるもの。気にしない。

発表に失敗はつきものです。しかし細かな失敗はたいてい聞いている側は気にしていません。

話がだとだどしい、噛む、間があく、スライドの誤植、スクリーンからスライドが少し切れている、などなど発表者としては気になる小さな失敗はたくさんありますが、聞く側はそれを認識はしますが、それが発表の印象にはそれほど大きく繋がりません。

本書では、デール・カーネギーの「Public Speaking for Success」からの引用を用いて、同じ発表でも話す側と聞く側でいかに印象が違うかが語られています。

よい講演家が話し終えたとき、通常そのスピーチには4つのバージョンが生まれています。その講演家が話したスピーチ、その講演家が準備したスピーチ、その講演家が話したと新聞に伝えられているスピーチ、そして、講演家が帰宅途中でこう話せばよかったと思うスピーチです。

大事なことは話すべきこと、発表の内容であって、まずはそれに注力すべきです。

2. 「人前で話すのは怖い」ということを自覚する

本の中では「人類の最大の恐怖」というリストが紹介されています。

1. 人前で話す
2. 高いところ
3. 虫、虫、そして虫
4. お金の問題
5. 底なしの水
6. 病気

さすがにこれは大げさですが、こんな例えが出るほど、やはり人前で話すということは怖いものです。人前で平然と話す人でもよく観察すると緊張している様を見ることができます。

まずは、人前で話すのは怖いということを自覚し、それは当然のことだと受け入れることが大切です。

本書ではその恐怖を克服する有効な手段として事前準備の重要性について語られています。

3. 事前準備がとにかく大事

パレードの法則などで「段取り8割」と言われていますが、まさにこれですね。事前準備の出来によって発表の出来が大きく左右されます。

本書では事前準備としては、発表内容を考える、スライドを作成する、練習するなど通常の準備で行うことはもちろんのこと、さらに会場への入り方、発表機材のチェック方法、発表時間までの過ごし方、など数多くのTipsが書かれています。

会場への入り方や発表時間までの過ごし方などは、いわゆる勉強会での発表に際しては、やや過剰気味に見える気もしますが、これらは全て「人前で話すときの失敗をできるだけ避けるため」であり、さらに「その失敗の想像から来る恐怖を軽減する」ためのものだと感じました。

「たかが勉強会の発表のために、こんなことまでやらなくて良いかな」ということでも、自分がそれをやって楽に発表に望めるならやっておいた方が良いです。

プログラマー的な発想でいうところの「怠惰」と似た感覚ですね。(本番で楽するために全力で準備しておく)

出来うる準備は全てやっておいて、そして気持ちを楽に本番に望みましょう。

4.準備にかける時間

ではどれくらいの時間を準備に割けば良いかということですが、それについて参考になる内容があります。

100人があなたの話を1時間聞く場合、それはあなたが言わなければならないことに対して聴衆の100時間という時間が充てられるということを意味します。聴衆のために準備をし、聴衆について考え、聴衆の必要性に最も合うようにあなたの考えを磨くために、5時間、10時間という時間を充てられないとしたら、聴衆の時間に対するあなたの尊敬の念についてなんと言っていることになるでしょう。

これを5分のLT(ライトニングトーク)に当てはめると、聴衆が200名であれば、5分*200=1000分という他人の時間が充てられるということです。これだけの時間が充てられるのですから準備に時間をかけるのは当然のことかもしれません。

ただし、これは1000分かけて準備しなければならないということではなく、最大それくらいの時間を準備に費しても良いということだと思います。(技術系の発表では調査含めて、さらに多くの時間がかかることも多いですけどね:D)

もし準備に時間がかかることを気にしているならば、実際の発表では聴いている方からこれだけ多くの時間を頂くわけですから、安心してじっくり時間をかけて準備をしましょう。

5. 練習のススメ

これは最も大事な事前準備と言っても良いかもしれません。発表の練習です。

ここでいう練習というのは、発表で話す内容の一文一句を間違えずに話すようになるということではありません。

私の目的は単に自分の原稿を理解して十分に安心できる状態になることです。完璧ではなく、自信が目標です。

話す言葉はその時々の表現で問題無いのですが、話すべき内容、発表で主張したい内容のいわゆる発表の芯の部分を徹底的に磨いていく作業が練習だと思います。

この発表内容を精査していく手法として以下のような方法が紹介されています。

私は練習するとき、特に新しい原稿の草稿で練習するとき、たくさんの問題に遭遇します。そしてつっかえたり、混乱したりしたときには、そこで中断し、次の選択肢から一つ選びます。

・もう一度やればうまくできるだろうか?
・このスライドかこの前のスライドを変更する必要があるか?
・この文章すべてを一葉の写真と説明に置き換えることができるか?
・前の論点からこの論点へのもっと良い誘導方法はあるか?
・この論点またはスライドまたはアイデアを単に完全に無くしてしまったほうが全体的に良くなるだろうか?

大きな間違いをせずにひと通り最後まで話し終えられるようになるまでこの過程を繰り返します。

発表で伝えたいことが明確であれば、表現で多少つまづいても大きな問題にはなりません。それより結局何が言いたかったんだ?という発表の方が問題です。

誰もいないところで一人で練習するのはなんだか小っ恥ずかしいですし、やり辛いものです。しかし事前に練習を行っておけば論点の矛盾や展開のつまづきに簡単に気づくことができます。

発表が苦手な人ほど練習を避ける傾向にあるようなので、次回の発表ではじっくり練習をやってみてはどうでしょうか。

他にも気になるTips

発表への苦手意識を克服するという視点で取り上げていますが、この本では他にも発表について数多くのTipsがあります。

個人的には以下の内容が面白かったです。

  • 主張の伝え方
  • リモコンやモニタ、マイクなどの機器について
  • 「えー、あー」を止める方法
  • 話を聴いてくれない、質問を執拗にする、など少し困った聴衆に関する対処
  • 発表内容、タイトルを考える方法

人前で話す人にオススメしたい本

著者のような著名な講演家が練習をじっくりやっているという点について非常に心強く感じました。私自身も過去の発表でうまくいったと思う時は、事前に準備をしっかりやったときです。これからも安心してしっかり準備したいと思います。

本書では他にも著者自身の発表に対する考え方がユーモラスな表現を交えて率直に書かれており、とても地に足がついた内容になっています。人前で話すこと本業にするような人だけでなく、私のように勉強会などで話す程度の人間にとっても役立つ内容が盛りだくさんとなっています。

信頼のオライリー・ジャパンですし、ぜひ一度手にとって読んでみて下さい。(お知り合いの方ならお貸ししますので、連絡下さい。)

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